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広島高等裁判所 昭和39年(く)14号 決定

少年 H(昭二〇・五・二〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、記録に編綴してある抗告申立書ならびに抗告理由書記載のとおりであつて、要するに原決定の処分は、本件非行の程度、家庭の環境その保護能力に照し、著しく不当であるというのである。

しかしながら、家庭裁判所のした保護処分の決定に対し、抗告をすることができる者は、その決定を受けた少年自身又はその法定代理人若しくは附添人に限るべきことは、少年法第三二条の規定上明らかなところといわねばならない。しかるに本件少年調査記録ならびに抗告記録(とくに因島市長作成の回答書や附添人選任届)等によれば、抗告申立人である○崎○馬は、少年の養母○崎○子の内縁の夫であつて、少年に対し事実上旧民法の継父と同様な関係に立つていることは認められるが、法律上の親子関係はなく、法定代理人として抗告権を有するものではないことが明らかであり(昭和三五・五・一七最高裁判所判決参照)、原決定後同人によつてはじめて選任された附添人もまた、抗告については何等の権限を有しないものといわざるを得ない。これを要するに本件抗告は抗告権のない者から申立てられた不適法な抗告として、とうてい棄却を免れない。(なお記録を調査し、所論処分の当否を検討して見ても、原決定の処分が不当であるとは認められない。)よつて少年法第三三条第一項、少年審判規則五〇条に従い、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 村木友市 裁判官 幸田輝治 裁判官 藤原吉備彦)

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